どの価格帯で勝負する?値付手法3、ポジショニングとヴェブレン効果

一般的に価格付けの基準にしやすいのは、競合他社の商品やメニューでしょう。
通常は複数のライバルが存在します。

その為、できるだけ高価なポジション(高い価格帯)で勝負しようと試みます。
競合相手が変われば価格帯も違います。
このように、最も高額な競合相手を選び、高価格を設定できるように絞り込んだ価値を、最重点価値と呼びます。
ポジショニングとは、自社の立ち位置のことですが、ひいては、どの価格帯の相手と勝負するのかを決め、それに合わせた戦略を練ることです。

まずは、メニュー開発の点では、以下のポイントを押さえておいてください。
1、お客様にとって、それが欲しくなるメリットはあるのか。
2、他社と比べて、競争優位性はあるのか。
3、他社が簡単に真似できないものなのか。
4、お客様からの信頼はあるのか。
5、収益は確保できるのか。

商品を売るためにウリを考えます。しかしながら、4つ以上のウリを考えてはいけません。
ウリは3つまでにしましょう。その方が分かりやすいし、お客様も理解しやすいからです。
吉野家のウリは、「早い、うまい、安い」でした。
今では当たり前ですが、その当時としては、画期的なウリだったのです。
3つにすることで、経営資源を注力しやすいとういうメリットもあります。

あのマーケティングの大家、フィリップ・コトラーの著書『競争上の地位に応じた戦略』では、市場におけるチャレンジャーの定石は差別化であり、リーダーと違う土俵で戦うことが成功要因とされています。
経営体力に劣るチャレンジャーが正面切って市場のリーダーに戦いを挑んでも勝つ見込みは薄いため、リーダーが手掛けていない分野や製品に注力して、顧客を惹き付けていかなければならないとあります。
つまり、その市場を席巻しているライバルが既にいるなら、それと同じことをやってはダメだということです。
その他のウリを作り、対抗しなくてはなりません。
つまり、ライバル店が3300円で先にお店を出していたとしたら、全く同じものを売るのは大変です。

なので、ウリを作って勝負することにするとします。
もしも、そのウリがお客様のニーズと合っているなら、ライバル店と勝負できるでしょう。
その時、金額設定をどうしますか?
ライバル店よりも安くして3000円か、同じ価格の3300円で勝負するというは愚の骨頂です。
損してますよー。
ライバル店と同じ価格でなくても構いませんし、300円高くしても、勝負できる可能性はあります。
だったら、3600円くらいで出した方が得ですよね。

 

<h4>ポジショニング</h4>

では、ポジショニングについて問題です。
例えば、コンビニでジュースを買うと150円するかもしれませんが、スーパーなら同じものが98円で売っているかもしれません。どうしてでしょう?
スーパーとコンビニの違いを考えてみましょう。
コンビニはスーパーに比べるとお店が小さいので、商品を選んだら、すぐに会計を済ませ、外に出ることができます。
これがコンビニの最大のウリです。

実は、人間は買い物をする際に、いろいろな手間や時間もコスト計算しているのです。
もしも、スーパーの目の前の自販機では150円のペットボトルが、スーパーの中で98円で売っていたとしても、入って確認するのは面倒なので、自販機で購入するという人は多いのではないでしょうか。
広い店内に入って、探して選んで、レジで並んで、購入するには、時間と手間がかかります。
数十円出せば、その手間と時間を省けるのなら、そうしようと、意識下で考えています。
スーパーは、コンビニと比べると、一つ一つの商品は安くても、客単価は高いのです。
それは、広い店内を回遊する間に、いろいろとついで買いが起こるからです。
大量仕入れで、安く売っても、いろいろな物を買ってもらうことで収益性がアップします。
なので、坪単価の収益性を考えると、コンビニはあまり安売り戦略をしたくはないのです。
狭い店内ですから、売れる商品だけを置かなければ、採算が合いません。
なので、POSシステムなのです。
お客様の欲しい商品を分析し、売れる商品だけを棚に並べています。

最近ではコンビニも、オリジナルブランドを展開し、スーパーに対抗した価格もさることながら、逆に高額なプレミア商品を投入し、さらなる高単価を狙っていますね。さすがです。
コンビニで売れない商品と判断されたら、棚から撤去され、ディスカウントストアの棚に並びますね。
ローソンでは、100円ローソン店舗を作り、ここでも利益を上げています。
まさに、シーケンシャルスキミングの好例でしょう。

さて、ここで問題です。
例えば、あなたが何かの商品を開発し、スーパーかコンビニで売ってもらうとしたら、どちらがお得なのでしょうか?どちらに置いても売れると仮定して考えてみましょう。
薄利多売で買い付けられるスーパーにおいてもらえば、一個一個の利益は小さくても、数が多い分、大きな利益になります。
一方、コンビニでは、一個一個の利益は大きいのですが、スーパーに比べると、売れる数が違います。
もしも、その商品を広く大人数に売りたいなら、スーパーがいいかもしれませんし、多くのお客様よりも少人数しか買わなくていいから客単価を高く維持したいということならば、コンビニがいいですね。
安い商品というのは、お客様にとっては、その商品価値は小さいと思われてしまいます。
安い価格帯のポジションで勝負したければ、スーパーがいいかもしれませんし、高い価格帯のポジションで勝負したければ、コンビニですよね。

ヴェブレン効果

価格には、品質表示機能があるといわれています。
それは、高いものは品質の良いもの、安いものは品質の悪いものだということです。
低価格の物は、期待も低いのです。
また、商品の価格が高ければ高いほど、その商品やサービスへの満足度が高まる」現象があり、「ヴェブレン効果」といいます。
いわゆる高価なブランド製品が売れる現象は、このヴェブレン効果として説明されます。
人と同じものでは満足できない、お金はあるから、違うものが欲しいと思っているお客様は存在します。

なので、理由なく値引きをすることは、常連客の満足度を落としてしまう場合もありますので注意が必要です。
もしも値引きをする際には、安くしているその理由をしっかりと作ってください。
その理由が、常連のお客様に届いても、気を悪くしないような理由であれば、かえって購買欲が増します。
昔、とあるゴルフショップが火事になりました。
倉庫には、焼け残っている商品が沢山あったので、「泣きっ面に蜂セール」火事で大変なんです。なので安くしますよーってセールです。
これには常連さんも、いい品物が安く売っている可能性もあると飛びついたのです。
閉店セールも同じような戦略ですね。
そのブランドのファンは、今がチャンスと飛びつきます。

 

<h4>価格は品質機能を紹介している</h4>

話を元に戻します。
価格の品質表示機能について説明します。
例えば、ドラッグストアでお薬を買う時。
高ければ高いほど、効き目があると思われています。
でも実は、お薬の製造単価は、そんなに高くはありません。化粧品などもそうでしょう。
しかしながら、安く作れるからといって、安い定価をつけると、あまり売れなくなるそうです。

価格には購入後の安心感もあります。
実のところ、いろいろな業界で、実際にかかるコストを計算した価格と、お客様に提供する販売価格は、ずれているかもしれません。
お客様に安く提供したいなら、流通コストを削減たり、大量購入したり、ネット販売をしたりすれば、企業努力でいくらでも安く提供出来ます。
しかしながら、安く作れても安く売ってはいけない商品があるのです。
それはお客様の期待が含まれているからです。

一流料理店で、いい食材を仕入れているから高いんですって場面を想像してみてください。
それは、流通コストや料理人などの人件費など、いろいろな手間を乗せた金額なのです。
その美味しいステーキは、実は、企業努力でもっと安く食べられるかもしれません。
しかしどうでしょう。もしも安く提供したら、ありがたみがなくなりませんか。
料理人がいくらいい給料を取ろうともいいじゃありませんか。
高い方がおいしく感じられるから。

とある実験で、同じワインを「安い価格のワイン」と「高い価格のワイン」」と2種類ありますと偽って、被験者に飲んでもらいました。
同じワインなのに「高い価格」のほうが「安い価格」よりも美味しいと思う方が多いそうです。
つまり、高くて売れるものは高くていいのだと思います。
無理に安くすることで、品質の良くないものなのか、もしくは、何故安いのかその理由があるだろうと考えてしまいます。

それは、手技療法業界でも言えます。
スタッフとして働いている間は、お店のメニュー価格は決まっているでしょうから変えられませんが、独立したら自分で決められます。
しかしながら、開業した多くの方が、他社と同じような料金形態をとります。
これはちょっと考えものです。
もしも貴方が、大手のような薄利多売で提供するお店を作りたいなら、人を雇ったりする人材育成のノウハウや、多くの人を集客する広告のノウハウ、税金計算や経理のノウハウ、将来を見通した戦略を立てるために経営ノウハウを勉強しておかなくてはなりません。
薄利多売も立派な戦略です。簡単には出来ません。
人を雇うというのも簡単なことではありません。
大手は、大手のノウハウが有るから、薄利多売戦略という有利な戦略を取れるのです。
小さいお店が真似をしたら、自分の首を絞めるだけです。

自分一人でやる個人サロンを考えてみましょう。
ざっくり言えば、自分一人が食べていくには、零細企業でもやっていけます。
場合によっては、一日お客様一人だっていいかもしれません。
しかしながら、細々と食べていくのは悲しいですよね。
ある程度の収入を目指すうえで大事なのは、提供するメニューの独自のウリ(USP)があることと、その価格設定です。前記しましたが、出来れば、ウリは3つ考えましょう。
ほぐすことが上手いというのは独自のウリにはなりません。
実のところ、そのような方は沢山います。

なので、まずは、独自のウリを作りましょう。
それが出来たら、それをどのようにポジショニングするかという問題になります。

手技療法業界の初心者が、就職する際に入りやすい就職先は、多くは単なる「もみほぐしのお店」からでしょう。
人の身体を沢山、触れるうちに感覚を学べますし、それはいいことだと思います。
次に何を目指すのかが非常に大事になります。
良質なサービスをしっかりと提供するのか、施術の効果を上げるために治療系の手技を学んでいくのかということになります。
① 単なるもみほぐし店
② 良いサービスを付加価値として提供する
③ 良い技術を提供する
の3つがあるとすると、そのポジショニングを考えた時には、①②③の順に価格設定が出来ます。
ざっくりとですが、①は3000円~6000円、②は5000円~3万円、③は6000円~100万円以上かも。というふうに価格設定できる可能性があります。
環境の違いはありますが、価格だけを簡単に対比をするなら、スーパーなのか、コンビニなのか、レストランなのかということです。
ジュースを例にとれば、スーパーでは98円、コンビニだと150円、レストランならグラス一杯800円で提供されるでしょう。
もちろん、周りの内装や雰囲気は全然違いますね。
雰囲気もサービスのうちですが、今回の説明では雰囲気の違いは無視して考えます。
そのうち、別の項で説明します。

はたして、あなたの技術は、どのポジションで売りたいですか?
②か③でしょうね。
それならば、②か③のスキルを磨いていかなくてはなりません。
そして、開業し、価格付けを出来ることになったら、その時は思い切ってつけましょう。
ちなみにですが、この先、業界が発展していくとしたら、②のお店がもっと多くなります。
その時には、もっと素晴らしいサービスを提供できなければ淘汰されてしまうかもしれません。
中途半端は生き残れません。

③は、大手のような大勢の人が一緒の職場で働くようなお店では、なかなか出来ないポジショニングです。
というのは、術者の技術は人それぞれで、スキルに大きな差があります。
なので、一定のものを提供する形式には向いていません。
特にカリスマ整体師を集めたお店は出来ません。
理由は、スキルを身に付けた方は開業してしまうからです。
ベッド一台あれば開業できますから、開業ハードルが低いのです。

ですが、美容業界は、開業ハードルが高いです。
なので、カリスマ的技術を身に付けても、開業せずに雇われているケースは多分にあります。
というわけで、美容業界では、カリスマ美容師を集めたお店は出来ますが、手技療法業界では難しいのです。
よって、永続的に素晴らしい技術を持った方を常時、数人集め、ずっと雇用し続けるのは難しいのです。
なので、大手のようにスタッフを数人雇うお店では、③のお店を作るのは難しいことがわかります。
ということは、大手が太刀打ちできない③の独自のウリを作れたら、将来にわたり怖いものなしだと思いませんか。
世の中には、手技やサービスの質を良質なものに統一し、練習や勉強に熱心なお店もあります。
そういうお店は強いです。
しかしながら、そのようなお店の真似をするのは難しいのです。
リーダーによほどの素質が無ければ難しいと思います。

ちなみに、①のスキルしかないのに、②や③のお店を作っても失敗する可能性は大きいですよ。
よく、他業種のオーナーが、リラクゼーション店を開店し運営するケースがありますが、数年前までは大丈夫であったでしょうが、これから先は、ますます厳しくなると思います。
まず第一に、現場での問題点の把握が想像できないからです。
そして、お客様のニーズも、つかみ切れていない可能性もあります。
数年前までは、業界としても発展途中で、いいお店、ダメなお店が沢山ありましたが、お客様も技術レベルに対する経験もあいまいなので、なんとか運営できました。
しかしながら、お客様が術者の良し悪しを判断できる時代に突入していますから、技術力のないお店は淘汰されていくでしょう。

ポジショニングを勉強していくと、ポジションが違えば、お客様の客層が変わることが分かります。
そうなると、安い価格で引き付けたお客様に、高い価格のものを売ることは不可能のように思えます。
厳密には不可能ではないのですが、安い商品が好きな人が高い商品を購入する時は、それなりの理由があります。
なので、初めから安いポジショニングに置いたら、高いものは売れません。

「じゃあ、今までの薄利多売の経営戦略は間違ってるの?」という訳ではありません。
オープンから数年は、お店の認知とファンづくりのために浸透価格戦略。
そして段々と、手技療法の良し悪しが分かるお客様が増えていくことで、次の段階の中価格帯戦略を行います。
無印良品や、ユニクロの中国での展開のようなものです。
良い商品だと認知されれば、高く売れます。
良い技術者が揃っていると認知されれば、高いメニューも出るようになるでしょう。
個人店では、薄利多売は難しいのですが、人を多く雇う大手なら、この成長戦略をやっていくのも良いと思います。
もちろん、薄利多売のままでも構いません。
そこで、マッサージに慣れたお客様が次のステップのお店へと流れていく。そのお店では少し料金は高くなるけど。
これこそが、業界全体の良い循環です。
薄利多売のお店は、儲からなくなるの?って心配な声もあるかもしれませんが、そんな事はありません。
だって、マッサージを受けたことのない人は世の中にごまんといるし、
これから社会人になる人達だって、毎年毎年います。
とはいえ、少子化は心配ですけどね。